『デューン 砂漠の救世主』 フランク・ハーバート

 ポウルが権力を握り恒星間帝国の玉座に着いて12年―いまべネ・ゲセリット結社、宇宙教会、べネ・トライラックスの顔の踊り手(フェイス・ダンサー)たち旧勢力は糾合してムアドディブ皇帝に対する陰謀をたくらみ、アラキスの宮廷めざしひそかにその恐るべき策略の手を伸ばし始めていた。(後略)(紹介文より)

 ということで、前作で絶大なる力を勝ち取ったポウルが、権謀術数の宮廷内で苦しむといった物語。訳者あとがきに難解と言われることがある作品のようだが、特に難解という感じはしない。持ってまわった台詞や観念的な描写についてのことだろうと思うが、メインはそれぞれの思惑が入り混じり、皇帝一族に苛酷な運命が待ちうける、といった話そのものである。持ってまわった言い回しやらは話を盛り上げる要素だと割り切って、予言があまりはっきりとした運命を見せるわけではないというのも演出だと考えれば話に集中できる。前半はその手の観念的な話が多く確かに話の進行はのろいが、後半はなかなかの急展開で、この巻も十分リーダビリティは高いんではないかな。自分には苦手の長尺シリーズものだが、これはそれなりに読んでいけそう(息子の分までは考えていないけど)。それから、メランジの位置づけがやはりドラッグ文化を色濃く反映している辺りは60年代のアメリカSFらしいなあと思ったり(著者自身は1920年代生まれで、直接的関連が無さそうな世代なのが興味深い)。

 

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『風の十二方位』 アーシュラ・K・ル・グィン

 ル・グィンも興味がありながらまだ数冊しか読んでいない作家である。きちんとは思い出せないが『闇の左手』は面白かったように思う。本書は当ブログ主がSFを読み始めたころから世評が高かった。で、のんびり読む機会を探っていたら四半世紀が過ぎてしまった。いやはや。さて中身だが、予備知識なく手に取ったら(解説にもあるように)長編と関連するような短編が結構多かった。それらは決して単独ではわからないというものばかりではないが、わかりづらいものもあった。というわけで、それぞれの感想、そして単独で読めて面白いものに○を。
「セムリの首飾り」○ 『ロカノンの世界』の序章だったということで、これも長編関連作品といえるが、これはそのままでも楽しめる。ファンタジイ的な世界の裏にSF設定があるというもの。
「四月の巴里」○ とある文学博士がやけになって呪文を唱えると・・・。著者にとってはお遊びの短編なのかもしれないけど、こういうのは好きです。
「マスターズ」○ 中世(あるいは中世的な世界?)を舞台に科学的思考が秘蹟として一部の修士たちに受け継がれている、という話。派手なアイディアがあるわけではないけれど、いろいろな意味でSFファンの琴線に触れる作品でしょう。
「暗闇の箱」  ヒロイック・ファンタジイ的な雰囲気のある作品だが、いかんせん短い。
「解放の呪文」 アースシーの一部。傑作といわれているが、うーん単独だとファンタジイ方面に疎い身にはきつい(作品世界に没入しにくいのである)。
「名前の掟」 これもアースシーものだが、こちらは軽妙なコメディで楽しめる。「呪文」と共に言葉が大きな意味を持つところも特徴なんだろうなあ。
「冬の王」 冬というのだから『闇の左手』関連作品。ヒロイック・ファンタジイとSFの要素がバランスよく組み合わさっていて面白かった。ただ作品の背景を知らないとどうか。
「グッド・トリップ」 ドラッグもの。『天のろくろ』は積読中。
「九つのいのち」○ 退屈な惑星で仕事をしていた二人の男のもとに男女5人づつのクローンがやってきた!これは皮肉な笑いに満ちたSFらしい作品。
「もの」○ 終末をむかえる(中世的な)世界の中で、煉瓦を運ぶ男。ル・グィンいうところの<心の神話(サイコミス)>が、どんなものかいまいちわからないけど、何はともあれずしりと重い読後感が残る作品である。
「記憶への旅」 これも名前に関する話のようだが、言語実験的で難しい。
「帝国よりも大きくゆるやかに」○ 変な惑星にいって危ない目にあう、というストレートなスター・トレックもの。個性的な乗組員という点でも。わかりやすい傑作。
「地底の星」 中世的な世界で異端視された天文学者は。「マスターズ」と同傾向の作品。こうした中世的な世界を書かせるとほんとに巧いね。
「視野」 予定を大幅に短縮して火星から帰還した宇宙船の乗組員たちにおこったこととは。うーん、単独で読める作品だけど、これは平凡なよくあるSF。
「相対性」 まずまず楽しめるが、冒頭の作品紹介(全ての作品の前に著者による作品紹介がついてます)で著者自らネタばらしをしているのはどうか(本人はネタだと思っていないということか、うーむ)。
「オメラスから歩み去る人々」○ 美しく幸福に満ちた星オメラスとは。いやーこれは名作です。全部で11pにもならないのに、凄いぞ。ティプトリーみたい、というと勘のいい人はアイディアがわかってしまうかな。さて、この作品はSFマガジン2008年7月号若島正「乱視読者のSF短篇講義」で取り上げられている。本作から続くユートピアに関するル・グィンの思索の軌跡が(なかなかハードな論考だが)興味深い。また、若島先生と『所有せざる人々』の出会いが書かれていて、ル・グィンがtheという定冠詞ひとつの使い方で作品世界を構築できる恐ろしく高い技量を持った作家であることも伝わってくる。そういった意味では、なんだかこんなぬるい感想を書いているより、少しでも原書に当たった方がいいのかなと気落ちしてしまうが、まあそれはともかく邦訳の『所有せざる人々を』読まなきゃだ(と思ったら、積読してたはずなのに行方不明。入手困難のようだし困ったなあ)。
「革命前夜」 これはその『所有せざる人々』関連もの。まさに革命前夜の話のようだが、これまた単独では厳しいなあ。
 というわけで、読んでみたら初期のル・グィンの集大成的な作品集であった。多様な作品が入って著者自身の解説もあって充実した短編集だが、充実し過ぎてファン以外にはやや敷居の高いものとなってしまった感もある。入門編として、もう少し作品数が少なくてシリーズものと関係がなくてわかりやすい短編を集めたものがあってもいいのになあと老婆心ながら思いました。あと言葉を細かく使い分ける作家のようなので翻訳作業は難しそうだとも思った。  

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『スローターハウス5』 カート・ヴォネガット・ジュニア

 「大量殺戮を語る理性的な言葉など何ひとつない」
 前書きにあたる第一章での著者の言葉である。1945年2月に行われた連合軍によるドレスデンへの空爆の犠牲者は3万とも15万ともいわれる。その体験を何とか書きたいと思っていた作者だが、結局23年もかかる。その経緯については戦争体験を持たない自分には語る言葉がない。本書から垣間見る戦争およびその後の世界は想像を絶するほど苛酷な死と隣り合わせのものである。
 そんな状況をなんとか言葉にすべく、作者はSFの手法を使った。主人公は過去と未来と宇宙を行ったり来たりする。その中で、物事の因果関係が探られていくのだ。あの爆撃はなんだったのか。
 そして、たどりついたのは無常の世界。あまりに軽い人間の命。そしてそんな中誰もが生きていかねばならない、という諦念。不思議と温かさがある眼差しがこちらの気持ちを切なくさせる。SF的手法が、いまなお世界が直面する問題を語るべく見事に適用された傑作。

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『デューン 砂の惑星』 フランク・ハーバート

 長尺のシリーズである。休みを利用してとりあえず「砂の惑星」①~④を読んだ。
 舞台は全体が砂に覆われた死の惑星アラキス。しかしその一方で老人病に効くメランジという香料の宝庫でもある。また砂漠には時に四百メートル以上にもなるというシャイ・フルドといわれる危険な砂虫(サンドワーム)が跋扈している。そんな苛酷な環境の中メランジをめぐり対立するアトレイデ公爵家とハルコネン男爵家。そのアトレイデ家の後継で神秘的な能力を持つポウルを中心に権謀術数の物語が繰り広げられる。
 用語まで徹底的に創り込まれた異世界の構築度の高さで有名なシリーズだが、なるほど評判どおりでエキゾチズム溢れるアラキスの惑星とその文化にどっぷり浸かることができる。厳しい砂漠で生活するために特殊な戒律と風習を持つ民フレーメン、魔術的な技量を学校(魔法女子校?)で身につけた女性達ベネ・ゲセリット、訓練により最高の論理計算が可能となった官僚メンタート、皇帝の残忍な狂信的兵士サウダウカーなどなどの人物造形、環境に応じて開発された種々のハイテク・マシーン、さらに生き物だけではなく気象にまで目配りが効いているほど(コリオリの力による砂嵐!)。
 そうした創り込みの一方で、用語自体は過度に華美になりすぎず日常用語(簡単な英語)の部分も残っているので、凝った異世界ものが珍しくなくなった今では割と読みやすくなっているとも思う。また怖ろしい砂虫と香料に何らかの関係があるという設定に代表される生態学的な視点も現代に通じるもので、なかなか斬新である(砂漠の星を緑化していこうという話でもあるので、どっちかというとテラ・フォーミング的な方向性の話でもある)。
 さらにちゃんと波乱万丈ロマンスありの冒険活劇になっているところが最大の魅力だろう。SFファン大喜びのアイディアたっぷりの異星が舞台であり、用語も含め背景が物語にぐっと収束していくのでリーダビリティも十二分。その一方で、ポウルの不安定な予知能力の導入などのためか時々話が飛躍しそうになったりもして、きちんとまとまり過ぎていない破天荒さもあってSFファンまたたまらない。こういのが長編作家の資質というのかもなあ。
 砂漠を舞台にしているということで、用語や文化などにイスラム的な要素が強いが、4巻末の訳者と本人の対談(の一部)によるとハーバート著作には禅を基盤に含んでいることが多いそうだ。リップサーヴィスもあるかもしれないが、死生観などどこか東洋的なものが感じられるのはそのせいかもしれない。

 ちなみに、偶然最近ミステリチャンネルでTV版ジョン・ハリスン監督のデューンを観ることができた。まずは原作に忠実ではあったけど、ポウルの常人あらざる雰囲気は出ていなかったな。まあ難しいんだろうけどね。そういう意味では、例えば以前表紙に使われていた石ノ森章太郎イラストというのは非常に合っていたんじゃないかなと思った。で、もし映像化するなら抽象性が高いアニメの方がいいような気がしたんだけど、これはあくまでもアニメも映画もあまり詳しくない人間のアバウトな意見ということで。
 

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『緑の星のオデッセイ』 フィリップ・ホセ・ファーマー

 フィリップ・ホセ・ファーマーの長編を初めて読んだ。
 遠い未来の銀河系で、地球人(と地球外人とその混血)は生存可能な星に散らばって住んでいるが、宇宙旅行可能だった技術は忘却の彼方でどこの文明も退化した状態。そんな中宇宙船の事故にあった、主人公で地球人のグリーンは大きな草原が海のように広がる中世的な文明を持つ星に不時着する。また、地球人はあらゆる感染症に対処できる共生体を手術的に埋められており・・・。
 結局、以上の様な設定は、古い時代の地球文明で成り立っているエキゾチックな異星を行く冒険娯楽小説を成立させるためのもの。グリーンは奴隷にされてしまうのだが、現地の綺麗で情熱的な妻がいて、彼女には利発で従順な連れ子がいたり、地球に帰りたがっているのにそれも最終的には許されたり、全体に行き当たりばったりのわりにちゃっかり本人の望み通りに物事が運んだり、何だかまあ随分虫の良いお話ではある。でも、草原を行く帆船車のイメージは中々良いし、星の歴史についての謎解きもちゃんとあるなど意外に侮れないのだ。
 気は良いんだけどちょっと胡散臭いオヤジのホラ話を半分くらいの興味で聞いていたら、思いの外よく出来ていてついつい引き込まれてしまった感じ。グリーンが草原を旅する話だからThe Green Odysseyというタイトル、というあたりもオヤジギャグっぽい(まあ読んでいるこちらもオヤジなんだけど)。

※追記 今の世の中だと旧聞になってしまうのかな、2009 2/25逝去。高齢だからな。最近興味を持ちだした作家なので、
再刊とか出るといいけど。無理かな。

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『新しい太陽のウールス』 ジーン・ウルフ

 ひとまず読了。ファンサーヴィスの側面が強いという続編だけに、アクションシーン多めの主要登場人物(ほぼ?)総出演の全体的に明るいタッチの作品という印象。ただそこはそれ、一筋縄ではいかないんだよなあ。正直これを読んでも視界が開けたような感じはさっぱり得られないのだけれど、何となくではあるが細部のそこかしこに気に入っているところがあり、若島先生の解説で書かれているように、今後も自分なりのペースでこの果てしない迷宮をさまよいたいと思う。

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<新しい太陽の書>④独裁者の城塞

 なんとか刊行ペースに追いついたな。解決編ということでこれまでの謎が一気に解明される、っていってもそこはウルフ、普通にわかりやすくは書いていないので残念ながら全然すっきりしなかったのです・・・。大体この本を読んだことがあるはずなのだがまたまた記憶が蘇らないのだ嘆息。それがまた後を引くことになり抜け出せなくなり。とりあえず宇宙的な話が比較的あからさまに出てきてるのはこの巻の特徴かもとは思った。さて『新しい太陽のウールス』を次に読むか、その前に①から再読をしてみるかどっちがいいのかうーむ。

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これは!

 悪漢と密偵さんのところで、うれしいニュースを知る。『宇宙飛行士ピルクス物語』が文庫版で復活とはね。つい数日前に図書館で『遥かな世界 果てしなき海』に収録の「パトロール」を読んで、もっとピルクスものを読みたくなってたんだよね。絶対買うぞ!問題は読書スピードが追いつけるかどうかなのだが・・・。

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<新しい太陽の書>③警士の剣

 話としては(いつもの)女難あり、子連れ狼あり、怪物の襲撃あり、ラストの大アクションありで起伏に富んでるかな(でもこれまでの巻だって色々あったか・・・)。それでもところどころよく分からないところがやっぱり多くて・・・。まあとにかく『新しい太陽のウールス』とSFマガジン10月号<新しい太陽の書>読本まで、なんとかペースだけはついて行こう。

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<新しい太陽の書>②調停者の鉤爪 ジーン・ウルフ

 いやー1巻目でオレなにを読んでたんだろう?早くも迷路に入り込んでしまったかのようでますます再読感がないや。謎だらけでなかなか難しいわコレ。仕方がないので断片的にいえば、冒頭の裁判(?)の話、ジョナスの章、水の精などが印象深いかな。きっと小説内劇のところがポイントなんだろうが・・・

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