映画‘スネーク・アイズ’TV視聴、思い出したこと

 冒頭えんえんと続く長回しのワン・カットで、ボクシング場を舞台にしたサスペンスフルな国防長官狙撃シーンが描かれ、おおなかなかいいではないかと思ったのだが。
 一昨年出た『ブライアン・デ・パルマーWorld is yours』の座談会で「後半こそむしろ、らしい」的な意見があったが、うーん普通は前半のサスペンスがうまく収束した方が納得するんじゃないのかな。もちろんデ・パルマ上級者座談会での意見だからアレだけど(いずれにしてもあまり褒められてはいない)。とにかくミステリー的な謎解きの面白さは中盤以降乏しく(あっけなくいろいろな事実が明かされる)、後半嵐の中のクライマックスを狙ったもののなんか盛り上がらず(詰め込み過ぎなのか、迷いがあったのか)。
 まあデ・パルマだからね。話の整合性であっといわせる方向は無いから。要はネタ自体の変態性が欠けていたとみるべきか。なにはともあれあまり言及されないのはやむを得ない様な出来。
 あ、でもファンはやっぱり見ないとね。冒頭はいいですよ。

 

 あと全然関係ないが、今日は真鍋博の誕生日らしい。新潮文庫の星新一、といえば絵柄を思い出す人はSFファンに限らずものすごく多いだろう。もちろん星新一から入った平均的なSFファンであったので、刷り込みのせいか、SFの基本みたいに感じるイラストレーターである。そういえばレンズマンなんてのもあった。
で、思い出したのだが、先日ぼんやりとNHKの爆問学問を見ていたら恐竜の話をやっていて、主役の恐竜博士が時間軸でとらえると過去も未来も変わらないみたいな話をしだしたのでおやおやと思ったら、父親の絵ですとかいって真鍋博のイラストを見せ始めた。その‘恐竜博士’真鍋真先生は真鍋博の息子だったのである。未来を見つめ続けたイラストレーターの息子が太古の謎(しかも恐竜)に挑んでいる、というなんだかSF小説を地でいくような親子なのだった。予備知識がなかったのでホントにびっくりした。

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『信長 あるいは載冠せるアンドロギュヌス』 宇月原晴明

 第11回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
 評判に違わぬ傑作。もっと早く読んどきゃよかった。
 両性具有の信長が魔術的な力を背景に戦国時代を制していく。一方、
1930年のベルリンでは、アルトン・アルトーの著作と三世紀の少年皇帝ヘリオガバルスについて、歴史に隠された闇の力の正体をめぐって、信長と関連付けられたディスカッションが展開される。さらに、その闇の力はベルリンをも覆っていく。超常的能力がからむ歴史ものといえば伝説シリーズなど半村良の一連の歴史SFが思い起こされるし、両性具有的な歴史上人物を扱っているということでは『日出処の天使』も浮かんでくる。しかし、太陽神信仰、近親相姦、聖なる剣、霊石などなど数々のキーワードで隠秘的(オカルト)な裏面史として、ヨーロッパも戦国時代も解き明かそうという大風呂敷振りは先達のマイルストーンらに決して劣るものではない。日欧ごったまぜの薀蓄も凄いが、一般の読者にとっては、信長を初めとする戦国武将たちが、この世あの世のあらゆる手を使い、権謀術数を繰り広げるところが読みどころ。幻術を使う乱波なんてわかってるよなあ。
 さて、戦国時代の異様な空気感、ということでは橋本治の『ひらがな日本美術史〈3〉
』を連想した。独自の切り口で日本美術の面白さを伝えるこのユニークなシリーズは、美術素人さあのうずにとって大変興味深いものであった。安土桃山時代あたりがテーマになった〈3〉には戦国武将たちの変な兜、<変わり兜>についての章がある。戦うことが常態となった戦国時代に「オレは死ぬことなんかなんとも思ってないぞ!」ということを示したかった大名達は、兜で自己主張をし始める。上杉謙信のかぶった大きな三宝荒神のついた兜を初め、お墓・鉄板・伊勢えび(?)・サザエ(??)・おわん(!?)などなどが付いた兜が載っているのだ。これをエラい武将がかぶっていたのだ、何だか楽しいではないか。また、この〈3〉には屏風に描かれた洋画、「世界地図の屏風」への言及もある。そんな屏風の前に座るお殿様。これぞまさにこの小説の世界そのものと思えるのだ。

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『美藝公』 筒井康隆作 横尾忠則画

  映画産業を舞台にした改変歴史物。経済大国ではなく、映画大国になった日本。美藝公という中心的象徴的存在(代替わりもある)となるスタア俳優を核とした映画産業で、脚本家である里井勝夫は素晴らしいスタッフに囲まれながら幸福に映画制作に没頭し続ける・・・。嫌な登場人物は皆無、スキャンダルを好む記者やファンも存在しないという設定で話がすすむ中、終盤に作者らしい毒が提示される。昔の映画界にについてはほとんど知らないが、映画業界が衰退する頃に書かれているだけあって、そうした流れに対する映画通としての作者の想いが背景にあるだろうことは分かる。そこにノスタルジーをみせながらも、理知的な考察が入り込んでしまうあたりが真骨頂とも言えるか。
 個人的には数多い横尾忠則の架空映画ポスターに感動。絢爛豪華で強烈な作品はどれも圧倒的。この人の画をみるとなんか元気が出る。ところで最近BSフジで横尾氏のインタビューを見たらいろいろ面白いことを言っていた。以下羅列。
 「ニューヨークは自分の創作に向かない。日本の風土の方が合っている。」
 「ウォーホルはサングラスをつけながら創作をしていた。だからあれだけ派手な色の作品になったのではないかと思った。」
 「現代美術というくくりから外れるものを自分がやればいいと考えている。その意味では自分にとっては<現代美術>というジャンルは在った方がいいのかもしれない。」
 「同時代の作家のものは影響を受けそうなのであまりみない。」
 「画家になったときは、作品が自分の思い通りにならずに苦労をした。」

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