『Boy's Surface』 円城塔

 読み終えてなんかいいたいんだけれどもいうことがない。
 短編集なのだが、それぞれの短編が何の話だかよく分からないのである。それでも表題作は盲目(盲視?)の天才数学者の恋愛物語という筋という枠が感じられるが。
 人を落ち着かなくさせる小説である。基本的にこちら読者は作者のたくらみを自分なりに読み取っていくしかないのだが、その非対称性が著しく大きく作者のたくらみが読み取れない。さらに作者が理路整然と話を作り込んでいるのが明らかで意図的にわかりにくくなっているのだから、なおさら居心地が悪いのだ。(いやわかりくくしてるつもりはないのかな?ああ術中にはまってしまっているようだ・・・)
 中ではチューリングとロリータ(!)がネタになってるメタフィクション(なのかな?)‘Your Heads Only’が一番面白かったかな(もちろん細部を楽しんだ程度だけどねえ)

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円城塔 Boy's Surface SFマガジン9月号

 よく内容が分かっていないのだが、やはり気になるのでまた円城塔を読む。BoyといえばBoy meets girlと考えてよいのだろうか。語り手は写像だという(雑誌の目次に書いてある)。でも本文では「数学者は僕らをモルフィズムと呼ぶ。」と書いてあり、「変換と呼んでもらっても構わない。」らしい。モルフィズムというのは写像なのか。一方でこうも書いてある「レフラー球。(中略)この数学的構造物が、ぼくらの捻くれた存在様式を生み出している、僕ら自身の構造である。」。とにかく「僕は数学的構造物」のようだ。この<レフラー球>というのは、架空の数学者であるレフラーの発見した定理から生まれたらしい。そして、このレフラーとその恋人フランシーヌの出会いと別れをこの<僕(ら?)>が描くというわけだ。このようにとらえたがどうにも確信が持てない。とりあえず、身近なテーマと形而上学的なディスカッションの融合がスムースにされているのが面白さだ、という平凡な感想ぐらいは書いておくか。今回も十分難解だが、「あまりに難解」といわれた改稿前の原稿がどうだったのか気になってしまった。

追加 どうやら各所をまわると‘青’には重要な意味が隠されており、上のようなぬるい読みはあっさり吹き飛んでしまうようだ。おそるべし円城塔。

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文學界6月号

いわゆる文芸誌なんてほとんど買わないから、文學界を買うのは初めてだと思う。もちろん円城塔の「オブ・ザ・ベースボール」が目当て。主人公は、年に一回百人ほど人が降る町のレスキュー隊員である。レスキューするのだから、せめてグローブを持ってほしいのだが、バットを持っている。おまけにキャッチャーは地面ではなく、空の方にいる。そんなわけで、文学賞だからどんなものかなと思ったら『Self-Reference ENGINE』と全く変わらない乾いた幾何学的ユーモアに満ちたすっとぼけた世界が展開される。まあ話そのものが《バッター・イン・ザ・ライ》で町の名前がファウルズなんだから、ふざけている(島田雅彦によると「世界のなめ方において、群を抜いている」)。選評が割れた様子もよく分かる。これだけ個性があると、後に大物になった時を考えて大絶賛しておこうかとも思うが、まだ自分の中での位置は定まっておらず。煮詰まらないでいろいろ書いて欲しいのが本音。 
 
で、もう一方の受賞者谷崎由依は偶然にも最近読んだジャック・リッチーの翻訳者。あたりまえだが受賞作「舞い落ちる村」はリッチーとは似ても似つかない幻想小説。円城塔と並ぶと、非常に伝統的な作風に感じられる。川上弘美氏の「わたしの小説に似ている」発言はちょっとおかしかった(確かに同感だけど)
 両作とも幻想・SF小説系の非日常的なネタで、最近の文学賞ってこんなになったのかと森をみずに木だけをみての感想。

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『Self-Reference ENGINE』 円城塔

 話題の本なので手を出した。意外と流行りものも気になるのであった。
 フクザツなことは分からないので、結局のところ大層よく分からない話ではあった。
 しかし楽しめなかったということはなく、ひんやりとした冷たい笑いの漂う奇想小説といった楽しみ方もできる話であった。どこへ行くのか見えない話の展開や、思っていたより多彩な語りぶりに感心。ボルヘスのようにもカルヴィーノのようにも感じられるところもあったりする。Freud、Bomb、Yedoあたりが面白かったかな。特にYedoには意表をつかれた。下敷きとなったSFネタも目に付くように提示されているので、SFファンであればまず楽しめるのでは。
 もう文學界新人賞をとっているそうだ。何はともあれ注目の新人であることは間違いない。

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