映画‘母なる証明’

 結構好きなんだけど初めて劇場で観るポン・ジュノ映画。
 女子高生猟奇殺人の犯人にされてしまった息子の無実を証明するためにたった一人奔走する母の物語。
 犯人探しという点では‘殺人の追憶’を、家族の絆を描いたという点では‘グエムル’を思わせるが、実は一般女性が自分の想いから無駄に走り回って意外な方向へ話が転がっていく‘ほえる犬は噛まない’の脱線ぶりに一番近い。ミステリだと力んでみるとちょっと肩すかしかも。とはいえ、基本的には端正なつくりで、その一方で変な後味の残るこの人らしい作品。大傑作とはいえないかもしれないが、個人的には十分面白かった。女の子ではなく中年女性(キム・ヘジャ)が奔走することをはじめ、随所にひねりが利いていて楽しい。おそらく観客の予想を裏切るのが好きなんだろうなあ。
 果たして愛しいウォンビン様を守る母親の気分でシリアス路線を期待した年長組の女性陣はどうお感じになったか気になるところではある。

http://www.hahanaru.jp/

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DVD‘グエムル’‘ほえる犬はかまない’

  またまたDVDである。しばらくすると日常的にはみられなくなるのであわててみているのだ(画像がいまいちなのでPCではみない)。さてポン・ジュノを連続してみてみた。

 ‘グエムル’。正攻法な怪獣映画で楽しめる。漢江の川辺で菓子や酒を売ってる貧しい一家。いきなり川から怪物が!残虐な怪物にひとり娘がさらわれる!一方、頼りないおやじ(ソン・ガンホ)は怪物からのウィルス感染の疑いで病院に隔離されてしまう。そこに娘から電話が!まだ生きていたのだ。娘の生存を信用しない政府や医療関係者を相手に、ソンおやじはその父と弟妹と力を合わせて娘のために脱走をはかる。
 基本的にはベタを恐れない監督なのだな。本作も本質的には王道な展開を示す。ところが、通常だったら泣かせに走りそうなところもすっとぼけた処理をしていたり、一般的には合理的とはいえないエピソードなどを盛り込んだりしているところが独特の味になっている。ハリウッドで撮ったらこうはならないだろうなとか。あと話の全体にアメリカの影が覆っている感じは日本人に共感できるところなのではないかとか思った。まあ何にしてもソン・ガンホってほんとにそこらにいるオヤジみたいな存在感というか実在感があるんだよね。いい俳優だと思うなホントに。
 
 ‘ほえる犬は噛まない’。こちらは長編デビュー作らしい。ネタがすごいよね。あーっとまかり間違えても犬好きの方はみないでください
 あと一息で教授になれる(はずの)大学講師(イ・ソンジェ)。団地住まいで近所の犬の鳴き声が気になる。その犬を何とかしようと考える。そこにちょっと間の抜けた管理事務所の女の子が関わって・・・。
 ネタはかなり人を選ぶが、基本的にはコメディである。デビュー作らしく狙ってゆるくつくってあるのか自然にそうなったのかよくわからないような天然感が漂い、傑作というにはちょっと足りない。ただこれはこれで‘殺人の追憶’‘グエムル’とは違った味がある。ぺ・ドゥナがかわいい、という感じの映画かな。

 3作では迫真の俳優陣の演技をクールに残酷に処理した‘殺人の追憶’が一番好みである。

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DVD‘殺人の追憶’

   以前から観たいと思っていた。2003年の作品だからもう4年以上か。今更かもしれないが、面白いねえ。
  1980年代にソウル郊外で実際に起こった連続殺人事件がモチーフという。とある農村で若い女性の惨殺死体が発見される。見込み捜査、自白頼みの取り調べを繰り返し成果の上がらない地元警察は、ソウルから若手刑事を呼ぶ。たたき上げの地方刑事とソウルのインテリ若手刑事(キム・サンギュン)は反目しあうが、それを嘲笑うかの如く殺人が続く。やがて二人は力を合わせ、有力な容疑者と対峙する。
   極端な暴力がらみと思い込みの捜査が続く地方の警察とそれに苛立つ都会のイケメン刑事という図式、あと一歩で犯人が捕まらない偶然など、ベタともいえるような展開が話の後半になっても続く。しかし、終盤になりテンションの高まる中、話は思わぬ様相を呈してくる。
   ソン・ガンホが素晴らしい (以前からあの人なつっこいような恐いような顔がイイと思っていたが)。話としては当然キム・サンギュンが中心であるはずだし、基本的にはそのように展開するのだが、本作はカタルシスが感じられるような通常のミステリードラマではない。そのため、前半に時代遅れの刑事を人間臭さく演じていたソン・ガンホが終盤に見せる表情が実に印象深く、その存在感がグッと増してくるという演出になっている。
  特に終盤の犯人視点での描写あたりからの演出はスリリングだが、大変理知的に作られていると思う。その意味でポン・ジュノ監督について、柳下毅一郎さんの昔の日記で黒沢清との類似が言及されているのには全く同感である(文章は‘グエムル’についてだが)。自分なりの解釈では、理知的な一方で理性では割り切れないものを描こうとする姿勢にあるのではないかと思う。いずれにしても猟奇連続殺人事件をめぐるもどかしさとやりきれなさが形となって表現されている傑作である。その‘グエムル’も観なきゃなあ。

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